奇態なおふたり/甲斐マイク
 
あけがた

つらい夢をみた



あたしは英国製の

いいいろの髪かざりをして

コオヒイをいれながら

ちいさな受話器をゆっくり眺めたり

たぶん

7人のビスク・ドオルに

それぞれの名前をあげて

くらくらしていた



それから

指差した方向から

光の揺れがつたわってくるのを

数えきれなくなっているあいだに

あたしは何度も泣いた



原稿用紙を花びらのやうに敷きつめて眠るかれは

うっすらと目をあけ、それからすこしわらう



「おいで、ぼく、まだ、しゃべれない」



遠くどこかの

アパルトマンのなかで

そのまっしろいかれの声帯を

あたしは

おぼえてしまった




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