花、バラード、/ballad
沈下するための水に溢れる花の中で、咲かなかった。ここは高山病の薄い香りがする高い山の頂で体を広げる。手に掛かるものはすべて冷たいまま通り過ぎ去ってくれる。温かくならないからこの場所にいられる。足先が水盤の上で凍えないために花を植える。温室の中では相変らず季節が吹き荒れている。その中心で、静まり返った父の椅子がある。そこは空白。何度目かの春に、母が座ろうとして多くのものを失った場所。姉のスカート、弟の枕。夢の中で繰り返される悪夢の喜び。そしてその種子。ばら撒かれた。この床に、誰かの皮膚に。
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