夢の入口 2011/たま
があってそれを口にすることも見ることもさ
わることも嫌でたまらなかった
老いるという約束をわすれるために夜も眠らずにさがし
ていたものは月あかりのしたをどこまでもついてくる卑
しい影のようなこのわたしの固有の愛だったといいきる
ことができたかもしれない
それは愛していると言えないままに受容する、嘘つきな
いのちだった
なにもかも投げ捨てることはできなかったはず
捨てきれないさいごの荷物をかかえたまま眠るふりをし
ていただけ、夢のなかは偽りの世界にすぎず眠ることの
口実でしかなかった
今夜いつものようにここを通り抜けたらわたしはもう二
度ともどらないつもりだ
知っていたのです
生れ堕ちて間もないわたしがこの手で隠しておいたもう
ひとつの夢の入口を
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