夢の入口 2011/たま
 
なにもかも捨てなければ眠ることはできなかった
今日ひろいあつめた荷物をまるで投げ捨てるようにうば
われていつまでもあきらめきれずに夢の入口に立ちつく
す日は朝まで眠れない
それはなぜか、老いることを拒もうとする姑息なすがた
に似ている

捨てきれないものをひとことでいえば約束という名の荷
物だろうか
たとえば、あした死ぬかもしれないという約束
けっして軽い約束ではないけれど、かといってまともに
対峙することもできず
眠らなかったらあした死ぬこともないのにとか、老いる
こともないのにとか
つい、そんなふうにはぐらかして朝までばかやろうな夜
と格闘したあげく、なぜ、こんな
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