猫/MOJO
 
 おれには、玄関の鍵を閉める習慣がない。鍵を無くしてしまうからである。これまで何度も不動産屋に迷惑をかけてきた。どうせ安普請のワンルームマンションである。侵入盗に目を付けられる心配よりも、不動産屋の苦りきった顔の方が、おれを圧迫する。よっておれは施錠をしない。ところが、そんな悪癖が、たまには興味深い展開を見せることがある。
 その日も施錠をせずに出勤した。おれの職は総菜屋でコロッケやメンチカツを揚げることである。故あってホワイトカラーから脱落したおれには不本意な仕事だった。
 仕事を終えて帰宅すると、玄関扉が数センチ開いている。履き古したサンダルが挟まっていたのだ。部屋に入るとなにやら気配がす
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