猫/MOJO
 
込み、出てこなくなった。
 野球中継が終わった。そろそろ頃合いである。おれは静かにクローゼットに近づいた。中を覗くと、猫はおれを見ないが、興奮している様子はない。おれはそっと指を近づけ、猫の顎の辺りを愛撫する。すると、猫は両耳を水平に保ち、これは、服従、あるいはリラックスのサインである。おれは猫を抱き取り、ベッドに戻る。仰向けに寝て、猫を胸の上に置いてみる。猫はあのゴロゴロ音を発している。小柄な虎ぶちだが、腹が膨らんでおり、仔を宿してるようだ。おれは猫の前肢を目を閉じた瞼に置いてみる。それはひんやりとして心地よいものであった。
 翌日から、おれは残った惣菜を持ち帰り、マンションの近所であの猫を
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