手を握り秘めていたものを/ballad
 
 私がまだ貯水槽の底に沈んだ都市の中で眠っていた頃に、母が私の頭に血をたらして、私は裂けた。泣く前に、裂ける事を覚えた私の体は、ゆっくりと沈んで起き上がることが無かった。20歳でケータイを傘につるした、それもたくさん。もうウンザリって具合に、それ以来、誰も私に話しかけなくなった。
 母が、血を私にたらして、私が裂けて以来、何もかもがうまくいかない。とどめられていた水の中で、私がまだ形にならずに、物語を書くことを覚えようとした時だって、私は裂かれ続けた。
 何度目かの裂かれ続けた日に、父が私に少しだけ涙を与えた。その涙はすぐに、私の皮膚をざらざらに乾燥させて、私はもう砂にうもれてあぷあぷしながら
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