川原/α
においが更に生じ底暗い刔られ湿った地面からは細かく黒いものが無数に這い出して拡がる。長らく鎖されていた死である。絶えることなく湧き出し暗い中を這いゆくのだけが解る。なにしろ今日は暗い。
全て脇目も振らず川を目指す。まるで子海亀のように進んでゆくが鳥は来ない。黒く細かい死は川の水に呑まれ波に弾かれ石の大小を乗り越え川に押し流され、流されてゆく。
やがて遠く川下でポツポツと灯が点る。流れる死々累々が何かの折に陰火にでも転じたのだろう。無数に川を覆うほど川原を石の代わりに覆っていた死は光となって流されてゆく。下流から来る者が遭えばさぞかし美しかろう。
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