東征/片野晃司
老いた男は再び思い出す
未だ終えていない東征のことだ
錆の浮いた剣を取り
列車に乗って東へ向かった
列車が大きく揺れるたびに
男の背骨が痛んだ
線路が右にカーブしたあたりで
列車は朽ちてしまった
男は線路の上を歩いて進んだ
線路は雑草の中に消え
痛む脛で叢をかき分け
かき分ける手の甲は傷つき痛んだ
わずかに踏み固められた畝道は
鄙びた漁村で終わっていた
村はずれのホテルで女を買ったが
何もせずに帰した
妻を思って泣いた
同人誌「minifumi」掲載作品 2004/02初 2004/11改
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