聖域なき未来に少女がみた世界/済谷川蛍
 
歩をして調べたことがある。この住宅地で平日の深夜の2時過ぎに明かりがついている家はうちだけだった。俺だけが苦しんでいた」
 父親は、娘が自分の車のエンジン音をひどく嫌がるのに気づいて出発した。
 「いや、娘も苦しいのだろう。しかし俺のほうがもっと苦しい。家では出来そこないの執事だろうと、社会では俺はしのぎを削る会社員だ。同僚が首を切られる中、俺は生き残っている。だから食えていけてる。この前いきなり代引きで届いた服だって、10万だと? お前が満足するのならと思い、払ってやったじゃないか。お前はまったく、俺の思いやりを何だと思ってるんだ。ろくでなしだ。お前は今15歳、お前が大人になるのに、あと何年
[次のページ]
戻る   Point(0)