ガーゴイル/三条麗菜
 
古い摩天楼の傾斜した屋根から
飛び降りようとした時
屋根の上に
傷ついて飛べなくなった
白い鳥を見つけた
微風のように柔らかい羽毛が
ところどころ血に染まっている

しだいに弱ってゆく鳥の傍らには
翼の生えた魔物の石像があって
それが次第に生気を帯びてきていた
その翼はゆっくりと動き
瞳のない目が時おりまばたきをする
その目は彼方に駆ける黒雲を向いている
黒雲からは亀裂のように
金色の明るい空が見えている

 夜明けだ

石像が言った

 この鳥が来るのを待っていた
 この鳥は都市の埃に汚れ
 今に俺と同じ色になる
 その時俺は飛び立てるのだ
 こ
[次のページ]
戻る   Point(15)