二月へ/はるな
私の本当の宝物を、不本意に持ち去られたり損なわれたりするようなことなのだろうな、と考えていた。
そのとき私はきっと何かを後悔するのだろうとも思った。でも違った。
なんと言ったらいいのだろう。
そのとき、わたしは、手に入れるということが、自分の思っていたこととは違うことに気付いた。それまで私が「手に入れた」と思っていたことは、世界からおすそわけをもらっていただけだったのだ。もちろんあなたたちが知っているように、世界の懐はひじょうに深く、やさしい。わたしは分け与えられていたのだ。世界はいつも、望むひとには分け与えてくれるものだから。しんぼう強く、そして素直に欲しがれば、世界はいつも自分自身を開示してくれる。
わたしが、世界ではないものを、ほんとうに欲しがったとき、それは欲しがれるものではなかった。手に入れることができないのではなくって、手に入れようとすることのできないものだった。遠すぎたし、あまりにもありふれていた。欲しくって、めまいがするということを知って、欲しいというのがどういうことかもはじめて知った。
戻る 編 削 Point(0)