Embrace/
 
唇と犬歯が押しとどめた嘘が
行き場をなくして
背を裂き翼を作った
ふれれば破れてしまいそうな
薄い薄い膜のような翼

羽ばたいて辿りつけるのは
明るくない場所だけだったから
月より
金星より太陽より
宇宙の果てに最初に着いた

君は僕の腕の中で
怖くはないよと
愛しているよを
同じ口で紡ぎ
信じていると僕に笑いかけた
それがどれほどまでに
翼にとっての優しさだったことか



果ての地で
君は願い事を一つ
僕はそれに首を振らず
ただ笑って
最後の口づけを一つ



虹色の光が見えたかい
それが僕だ
地球に帰ろうとこの翼で羽ばたけば
こうなろうとは知っていた


君の願いを叶えよう
僕の最後の祈りだ
燃え尽きるまでに三度唱えるのを
忘れないでおくれよ
忘れないでおくれよ

僕を
忘れて お く
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