一歩/
花キリン
前に出る
その一歩に躊躇している
エスカレータは音もなく上ってくる
そして何事もなかったように下りていく
一瞬だけ誰にも気づかれず
時間の中に取り残されていくものがある
思いの難しさを先送りしてきたが
その一歩に
老いの定義が隠されているならば
そこだけが現実と少しかけ離れているのだろう
踏み出せない
その一歩に躊躇している自分がいる
エスカレータが音もなく上ってきては
誘うように足もとでその姿を消していく
考える時間は長くなるだけだ
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