【 母体回帰 】/泡沫恋歌
 
ザアー ザアーッと
出しっぱなしのシャワーの音
激しい雨が 大地を撃ち付ける
街も木も人々も
礫のような雨の洗礼を受けている

この雨がどこまで続くのか分からないが
雨の空間に閉じ込められた街は
静かな不安に沈んでいく
水没した低地では
『 希望 』という 
藁をさがして
人々が縋りつく

激しく流れ込んだ水は
濁流となって すべてを呑み込み
潔く 呆気なく 押し流してしまう
小さな 『 優しさ 』なんか
あ という間に食べられた

私は孤独だった
雨の音しか聴こえない
そんな部屋で猫を相手に暮らしている
一日に一度 温かいダージリンティを飲むことだけ
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