鬼ごっこ/花キリン
蝉の鳴き声が止んで
鬼ごっこしていた子供達が
みんな消えてしまった
木陰の小さな窪みには風が休んでいて
小さなため息を一つついている
じっと息を潜めていると
いつの間にか違う世界に
入り込んでいるのに気がつかない
気配の一つや二つは感じるものなのだが
消え去る瞬間とは
孤独なものなのだろう
長い時間がすっと降りてきて
白い雲が冷や汗を流している
もう鬼は探すことを諦めて
長い階段を下り始めている
階段の数を数えながら
消えてしまった子供達の数を重ねていく
ときどきくすくすと
笑い声が聞こえてくるのは
風の悪戯なのだろう
鬼ごっことは消え去ろうとする人を
見送る儀式なのかも知れない
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