密約/済谷川蛍
で伸びた塔の最上階。高台に建つ神殿。物思いに耽る者たちの共通の故郷。場所は定かではない。白いベッド、大きく窓が開かれた石壁、そして床、世界を創造するものはそれだけのように思える。私は私の姿を確認出来なかった。けれども、ずいぶん幼い身体であるように感じた。時間というものは無かった。なぜなら、この世界には過去も未来も無いからだ。自分だけの唯一の世界であることが何となくわかった。当たり前のように安らかな世界。間もなく、この世界に天使の存在を認めることになる。
これほどまでに安らかで、無垢であるというのに、まだそれ以前の記憶が残されている。何のためであるかは、すぐにわかる。会話をするためだ。
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