雪/花キリン
 

雪が苦悩するように、乱れ飛びながら地に落ちてくる。その一角で男と女がとけ合っている。ときおり風が交じり合い、男と女は冷え切った五感を、互いにさすり合い、男は立ち姿を気にしながら、雪に交じり合う女を愛おしいと思っている。手許に引き寄せられるように、寒さの粒が走ってくる。我儘な時間はいっときなのだが、一対になってとけ合う前の逢瀬とは、切ないほど急がなければならない。しばらくすれば、大きな感情が、男と女が横たわっている場所に積雪していくのだ。両の手の中でとけ合おうとする情念に、体が身震いしている。気がかりなものはどこにあるのか。山々や家々は、枕詞のように静まり返っている。この時間は夜なのだろう。灯りなどは相応しくないと、切り捨ててみても、身を置けば安らぎが生まれてくる。時間がそぎ落とされていく中で、とけ合うことの価値などは、目隠しされたままでいい。まわりが風などを忘れて静まり返っていくならば、男と女。まばゆいほどの光を生み出すことだろう。

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