野球少年 /服部 剛
 
あの日、少年が追いかけて 
精一杯伸ばした、グローブの先に 
白いボールは、転がった――― 

夢中で土の上に飛びこむ少年の姿が 
大人になったこの胸を 
無性に揺さぶるのは、何故だろう? 

やがて少年も大人になり 
陽が昇ってから暮れる迄 
一緒に歩む日々の仲間と瞳(め)をあわせ 
無数の見えないボールを 
一人ずつ、一つずつ
キャッチボールするだろう 

あの日、白いボールに飛びこんで 
泥に汚れたユニフォームで、立ち上がり 
野球帽の下に滲んだ汗の輝く 
永遠の野球少年のままに 







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