横たわる少女/三条麗菜
誰にも知られてはならない
耳をそばだてて
この地面の奥深くには
川のように赤い血が流れていて
少女だけがその流れる音を
聞くことができるのです
でも聞き続けていてはいけません
自分がなぜ一本の樹でないのか
分からなくなって
体の中身が根になろうとして
地中へと流れ落ちてしまうから
誰にも知られてはならない
耳をそばだてて
流れの存在に気がついたのは
木の葉もすっかり落ちた冬のこと
木枯らしに裸にされた樹の幹から
かすかに聞こえてきた鼓動があって
痛む腹を押さえながら幹に触れると
指に赤い血がついて
すぐに蒸発したのです
知られてはならないもの
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