[a:]/salco
ているのを私らは見た。
私らは座っていながら全員を知る。それが誰の子で、誰の孫で、誰の同胞で、誰の親か
も知っている。顔を見れば、元気なのか具合が悪いのか、楽しんでいるか悲しいのか、
好意を持つのか敵意が潜むのか、じき死ぬのも判る。私らは眠っている間も全員と共に
ある。私らの世界(動作=両手で掬い上げる)はこのようにある。
―― お前はよく喋る。何の為にそれほど舌を動かすのか。お前が声を発しても雨は降
る、地は濡れる、川は膨れる。お前は声でそれらに抗い(動作=拳で殴るふり)得る
か? では何を願うというのだ。
―― お前はよく掻く。芋や獣を探す代りに動作を止めてばかりだ。その棒だけが忙し
い。言って置くが、言葉で家は建たない。言葉で狩りは出来ない。言葉で子は生まれな
い。そこに私らを移す事は出来まいよ。
コキぺディア 「先住民族」 より引用
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