満点の夏/花キリン
 
       
満点の暑さを引き連れて
夏はやってきた
蟻の大行列は
トンネル深く沈み込んで働くことを諦めた
公園の噴水は
温水となってまわりに放出し始めている
花々は枯れ始めた

氷を縫い込んだ
紳士のスーツが大人気で
エアコンは心臓のポンプを
自力で動かすことが出来ないでいる
日傘は風を通すだけで
役割を終えたように疲れきっている
ハットはカラフルだが
思考の頂点の一角を防ぎきるので精一杯だ

小石に躓くと白い湯気が出る
温度計は上昇し暑さを刺激していく
孤独な陽炎は
燃えつき焦燥感が漂っている
満天の夏
満点の熱さだ
夕立が来ると
噂話のように人の群れが騒いでいる
炎天下では冗長した暑さだけが
引き継がれていくのだろう




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