なあおまえ笑ってくれよ僕が何度もおどけるたびに/高梁サトル
{引用=
おまえを失い汽笛が呼んだ
あの海に下りていけばよかったと
願う僕の果ては悲しい
炎天下
糸の切れた凧のように漂う
なあおまえ、笑ってくれよ
こんなにおどけた僕の毎日を
文字を綴っただけの紙切れを
いくら何枚重ねても
インクはだんだん擦れて消えて
消えた言葉は蘇らない
手紙を投げ込んだ暖炉の前で
いつのまにか眠りこけ
朝方冷たい炭のぬくもりに
細い指先は救われる
女はいつもうつつを見詰め
アルコールに耽ることも知らず
男はいつもゆめを見詰めて
アルコールに耽って戯言ばかり
つまらないつまらない生き物だと
言い聞かせ言い聞かせ
空白をまた
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