誕生 /
服部 剛
幕開け前の誰もいない舞台に
一つの卵が置かれている
(あの中に、瞳を閉じた胎児の私がいる)
ぴしっと殻を破り
世界に顔を出す瞬間を夢見て
(胎児の小さい心臓が、高鳴っている)
もし、大人になった日常が
色褪せてしまった夢ならば
いつのまにか、自らを覆っている
透きとおった卵の殻を破り
もう一度、世界に向かって顔を出そう
自らが新たに生まれる時
風の絵筆は日常の場面を撫でてゆき
花々がゆっくり開くように
世界の色はあらわれる
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