雲のかなた/yo-yo
 
ルもデータも雲のかなたにある。
そして、そこにある巨大な雲のコンピューターは、アメリカの何処かの、隠された場所にあるらしい。
考えれば考えるほど、雲をつかむような話になる。

ぼくの恋人も雲のかなたにいる。
雲ほども遠いから、まだ会ったことも話したこともない。
ときどきラブレターを書いて送る。すると、向こうからもラブレターが送られてくる。
それは単なる言葉の交信かもしれない。ぼくだけが勝手にラブレターだと思い込んでいるのかもしれない。だが、それだけで誰かと繋がっていると思える。雲のかなたにも誰かがいることを実感できて、すこしは幸せな気分になれる。交信が途切れると、やはり幻想だったかなと落ち込む。
そんなぼくを、雲日記の少年があざ笑っている。

このところ、スムーズに言葉が出てこない。スランプかもしれない。
ラブレターが書けないから、恋もできない。
ぼんやり雲を眺めるばかりだ。
ほんとの雲の顔を見てみたい。雲の声を聞いてみたい。
そのためにはまた、雲に向かってせっせとラブレターを書かなければならない。






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