月の山/蒲生万寿
池塘に架かる木道を歩き
空の青さを仰ぎ見る
近くの潅木に飛び来る鷽鳥
その喉の朱が眩しく映る
幾千年の時を経ても
なお変わらぬものがある
私はその真っ只中に居る
見るのではない
語るのではない
聞くのではない
感じるものを捉える
私が私ではなく
今が今ではなく
明日が明日ではなく
あるものを感じる
木道を過ぎ岩の上を歩くと
より強く感じるものがある
それは風か
それは花か
それは草か
ここにある大気か
岩が岩であることを足元から教えられ
土が土であることを歩みに覚らされる
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