雪仏/paean
 
おります、雪に日よけをかけたところで報われやしないのは」

「わたしがどうしてこの姿で、この雪仏の姿をして、あなたをお待ち申し上げておりましたのか、ご存じないはずはありますまいに」
「あなたはいつも唐突にいらっしゃるから、分からないのです」
「これで何度目になりますか。十五度目に、なりましょうか」

 わたしの身体はもう、人の形の名残を失くして、ただの雪玉になってしまいました。

「はじめのうちは、法を説いても差し上げました。けれどあなたは許して下さらなかったから、山ほどの雪を集めても参りました。私の身の内に飲み込んで差し上げたことも」
「あれは面白うございました」
「けれどあのときのあなたはどうにも冷たくて、味がなかった」

 ですからわたし、これをいつも携えてあなたをお待ちしていたのです。

 上人さまは袂から切子の小瓶をつまんで取り出されると、その中に夕焼けの色をはらんだシロップが、さらさらと揺れていました。
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