待子さん/salco
古家の床下から人骨が出た。
「だってあなた。ご主人が亡くなった後は息子さんが面倒看ていらしたけ
ど、やっと入所できたって話だったわよ? まさかねえ!」
「これだけの土地だもの、ご主人だって切り崩して相続税払ったのよ。ご
長男だって行方くらますよりもねえ、半分でも手放せばさ、結構なうわ物
建てて、お釣りで暮らせるのにって、私ずうーっと不思議だったの。それ
がさあ」
それが八年前である。肋骨には切創痕があった。盛岡のパチンコ店に潜
伏していた純一は服役している。不利な証拠は挙がらなかったが、小柄で
非力な母親に対する正当防衛は、当然認められるものではなかった。小さ
な記事だったから近在の住民しか憶えていないだろう。
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