坂の上にて /
服部 剛
「人生は、まさかという名の坂がある」
ある日、同僚は言った。
愛する女(ひと)と結ばれた僕は
30年住んだ実家を出て
12年詩を朗読していた店が閉まり
10年働いた職場から異動になった
「まさかという名の坂」を
上り切った断崖に立ったら
目の前には
ましろい空間が広がり
隣に、腹の大きい嫁さんが
にこりと微笑んだ
足元には只、一本のペンと
空白の日記帳が、置かれていた。
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