風のオマージュ その3/みつべえ
 
 ☆佐藤惣之助「燃ゆる町」の場合






 この作品は彼の第2詩集「狂へる歌」のなかの1篇です。

 見よ、冬の強い夜明けを
 彼女はとび起きた

 これが出だしの2行。「彼女」というのは若い工女のことで、これから「働きに行く仕度をする」のです。ここで目につくのは「冬の強い夜明け」という詩句であり、「強い夜明けを」「とび起きた」「彼女」の颯爽とした姿が思い浮かびます。この「強い」と「とび」を連動させる言葉の魔力!
 まったく「彼女」は元気です。あばら屋に住み貧乏で衣服も粗末なものにちがいないのに「風邪一つひかない」のだから。そして「いきなり井戸の水を」汲んで「どんどん
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(7)