いつのまにか八月がそこ。/榊 慧
ドラー。へー。
枝豆はもうあらかたザルの中にはない。
「そういやさ、」
「ん、」
「十七のカルトンケース貰ったあとの七月の終わりくらいに俺ふと決めたんだけど」
「んん、」
「独身貴族ってやつ?に絶対なろうって。」
「ん、へー、」
「で俺誕生日が一月三日だから会社とか勤めても多分三が日休みだろうし、元旦から三日間使ってでも年の数だけワインだか焼酎だかシャンパンだかあけようって」
「何を?」
「瓶。」
「多くない?」
「何が?」
「酒量」
「かもね。まあ正月でもあるし。」
「十七から結婚したくないとか思ってたの?」
「それよりもっと前から絶対したくなかった」
「へー。」
「独身貴族カンパーイてやりたいしね。するけど」
「へー。するの」
飲みきれなかったら暇な友人呼ぶ。そう言って枝豆の中身のないさやを生ゴミとして処理しに行った。そしてまた新たに冷蔵庫からさっきと同じように塩茹でした枝豆を出した。
「まあ食おう。あんときも死にたかったなひたすら。」
へー。
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