頑固堂書店購買部/……とある蛙
 
跛(びっこ)をひいた男が独り
本屋の軒先を横切る
そこが本屋の軒先であることなど
全く意にも介さず

杖をついた老人が本屋の中から出てくる。
一冊の本を購入するでもなく
じっくりと日課の立ち読みはしたが、
また散歩のルートに戻る。

車椅子に乗った男が
本屋に入ろうとする。
残念なことにその本屋の間口は狭く
車椅子の男は車椅子ごと本屋に入ることが出来なかった。
車椅子の男は本屋を呪った。

本屋の前は裏通りで
道行く者のほとんどが興味を示さない
たまたま興味を示す変わり者を
本屋は断固拒絶する。
この本屋は断固拒絶する。
本屋は週刊誌を置いていない
本屋
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