午後の化石/たま
 
八月
隙間のない日差しが街を埋めつくして息をとめた地上
の生きものたちは白い化石になるだろうか

昼下がりの昆虫のように日差しを避けて地下に逃れた
人びとの背にうっすら
あの日の地核の影が宿っていたとしても
その足をとめて大理石の柱と語りあう人はいない

アンモナイトの正中断面に浮き出た隔壁を、ひとつ、
ひとつ指でなぞる 
足元には四射サンゴの群体だろうか
白い小花が群れて咲き乱れるようにうつくしい
しんと冷たい大理石は、わたしの指先の記憶のなかの
愛しい体温を少しずつ奪う


 どこにいるの?  

Hからメイルが入る

 東銀座の地下だよ。どうしたの
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