ゆうぐれゆらら/凛々椿
 
夕やみ歩く猫
のし
のし
人ごみと並んで歩いては
立ち止まり
都会が鼻歌まじりに風を歌うのを じっ と聞いている
夏はまだ長い
今日もずいぶんと蒸していて
建物からこぼれる冷気とごちゃまぜになっていて
あの時のように
ああ
またこの季節が来たのかと気づくもう何もかも遅いのだけれど


ゆうぐれゆらら
明かりがあめ玉のように 
ちらばって 
広がって
また
ドーナツ店の店長の気が狂い
居酒屋の客引きおばさんが交差点を占拠する時間がやってくる


彼は
微熱コンクリートに寝そべっては薄目をひらき
「海が見たいかい?」
魔法猫の真似をしては そっぽ向い
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