前日のこと/はるな
とだ。ぐんぐん遠のいていく明石、近づく品川、青いシートと白いシートカバー。そのあいだで、途方に暮れてしまった。
たとえばビールも煙草も、ひとりで遠くへ行くことも、自分の年齢も夫の感情も食事会もマニキュアもかかとの高い靴も、何も、何も役に立たない。文章をかくこともできない、うたをつくることもできない、立ち上がることもできないし、いっそ泣いてしまうこともできない。なにもできずに、電話がかかってくるのをぼうと見ていた。
と、思った次の瞬間にはかけなおしていた
そのような、わたしの「前日」を誰かが知ることもなく、滞りなく進められた、そんな食事会。
それがきのう。
もともと世界はわ
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