前日のこと/はるな
 
はわたしの知るよりもすこし遠くにあるのだし、わたしも、人々が触れるよりもわずかに内側にいるのだ。
実感はとうになくしている。わたしは、(というより、わたしたちのほとんどすべては)、なにもなくす必要などないのだ。そんなに恐れてばかりいる必要はない。
夫が傷つくことはかなしいし、それを防がなければならないとおもうけれど、やっぱりそれは夫自身の問題なのだ。

物事はずっと遠くにある。

誰が傷ついても、傷つく方が悪いのだ。
そのように思って生きてきて、これからいきなり大事な人の痛みを理解しようというのは、虫が良すぎるのだ。わかっている。
かえってくる、というのは、たぶんこういうことだったのだろう。
わかっている。

それがどんなに恐ろしいことなのかを、うすうす感じてきている。

感じてきながら、改められずに、電話をずっと眺めていたのだ。



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