虫をはなす /
服部 剛
少年の頃
食物をせっせと運ぶ蟻さんを
踏んでしまい
何故か無性に、胸が痛んだ
大人になった今
嫁さんは家の中で虫をみつけると
つまんで窓外へ逃がすので
僕も見習い、ある日
机の上を
夢中で横断する蟻さんを
ペン先にのせて
ティッシュに包んで、窓外に投げた
やがてゆっくりとティッシュは
白い花を開いて
微かに見える蟻さんは
庭の土をせっせと、歩いていった
戻る
編
削
Point
(1)