りょう /ふかく/かんな
そう、
不確かなんだよ。
君はそう言って
だから何度だって重ねなきゃいけない。
とつよく呟いた
それが
あの日の夕焼けのように
焼き付いて離れない
きっと
もう
剥がせない
耳にちいさな
まほうをかけるキスのように
あまく
何度でも
何度でも重ねていく
そんな恋は
グラデーションみたいだと
とても
鮮やかに
想像してみたり
さびしさは
ひとりでは感じられないと
漠然と
わかっていた
だから
ふたり
出会ったんだろう
あの日の夕暮れ
必要なものと
不必要なものを分ける行為のように
抱きしめあうことは
できない
すべて
などと大それたことも言えない
だから
君の一部を
すこしずつすこしずつ
浸食するように
抱きあう
何も言えなくなったときは
君と私
どちらともなく視線を合わせよう
会話ではなく
ことばでもない
不確かな事実を
ただ
わかり合うために
戻る 編 削 Point(5)