虹のない/あるせいかつ/コーリャ
 
ダイヤモンドより確かな一瞬に
石版みたいな青い空をみつける
だれの名前も刻まれることはないし
法律だって記されていない
ましてや
墓碑銘なんて思いもよらないのだ
だれかが今も死にいくなんて
信じさせない
まっさらな情景

地球は平面である
と信じられていた時代があって
円盤の縁には
世界の終わりにふさわしい瀑布がカーテンのように落ち込み
その下には
全てを飲み込むべく口を開けた怪物がいる
でも
ずいぶん前に失踪した台湾人の祖父曰く
それは誤りで
たしかに滝はあるのだが
盤を支えているのは数匹の巨象だという
象は人を食べたりしない
「でなければ」
と彼は
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