ある燃料/榊 慧
 
やっと俺はタンクの少し盛り上がったふちに、手を掛けられる。茹で死にを耐えている間。
きっとそうだ。
俺が打ち消すのに負けずに、肯定してほしい。俺は、打ち消したくて、打ち消してるんじゃない。好きでやらないそんなこと。でもそうなる。だから、だから。



俺は今日も肯定を“何一つされていないのに”あれとそれを打ち消した。

「打ち消すものがあるの?」

「あるわけないだろう馬鹿。」
「苛々する原因が多すぎて、俺には多すぎる世界で、だからいつも困っているんです。」


打ち消したものはたまってタンクの中を茹でる燃料になる、それだけの毎日、ああ今日もうるさい。それだけ。それだけ。
さようなら、それだけ。
戻る   Point(4)