ある燃料/榊 慧
やっと俺はタンクの少し盛り上がったふちに、手を掛けられる。茹で死にを耐えている間。
きっとそうだ。
俺が打ち消すのに負けずに、肯定してほしい。俺は、打ち消したくて、打ち消してるんじゃない。好きでやらないそんなこと。でもそうなる。だから、だから。
俺は今日も肯定を“何一つされていないのに”あれとそれを打ち消した。
「打ち消すものがあるの?」
「あるわけないだろう馬鹿。」
「苛々する原因が多すぎて、俺には多すぎる世界で、だからいつも困っているんです。」
打ち消したものはたまってタンクの中を茹でる燃料になる、それだけの毎日、ああ今日もうるさい。それだけ。それだけ。
さようなら、それだけ。
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