『生まれる過去』/あおい満月
ひとつの畏怖がわたしから
離れては風のようにまた寄り添う
ひとつの過去がまた終わると
また新しい過去が
未来のように生まれる
未来と過去とは
血流のように
交互に生まれ変わり続ける
わたしが空を
畏怖するのと同じように
鮮やかな陰が記憶から引き剥がされる
わたしはそれが怖くて
暗い地下鉄の手摺を掴む
雨に濡れた手がただひとつ
現実を指していた
生まれる変わり続ける過去とは何かと
探しながら手探りで歩く
思い出さなければいい
ただそれだけだけれど
二〇一一年六月三十日(木)
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