コルベの暖炉 /服部 剛
在りし日のコルベ神父という人が
住んでいた、大浦天主堂坂下の
記念館に入り
賛美歌の聞こえてくる奥の部屋に
教え子達と共に日々を歩み
雑誌を印刷した思い出の日々の
モノクロームの写真から
あまりにも澄んだ瞳が
眼鏡の奥からこちらに、微笑んでいた
展示写真を見ながら
コルベ神父という人の
生涯を辿った晩年は
恐ろしい、アウシュビッツの収容所
飢餓室に呼び出され
震える若い父親の身代わりに
「わたしがいきます」と言って前に出た
コルベ神父の頬骨は
イエスのように、痩せこけていた
見えない風に背中を押され
身ごも
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)