祭り囃子/村上 和
 


ため息の煙を吐きつつ喧騒の方へと歩き出す


 +


色とりどりの提灯が

何もない町の

何もない人たちを染めている

ひとつひとつのささやかな物語が

咲いては消えてゆく途中

たまやかぎやと

同じ夜空を見上げている


 +


祭り囃子が止んで

手を繋ぐアンパンマンとそのお母さん

照れくさそうに笑う男とそれが可笑しくて笑う女を見送った後

ねじりはちまきを解いて屋台を片したら

またそれぞれの日常へと帰ってゆく

香ばしい匂いと

昼間とは違う宵の熱気は

湿った夜風が流して

何もなかったように

元の姿に戻るのだろう



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はぐれないように

手をつないでいてと

独りぼっちが呟く

遠くから響く

酔いどれの音色

誰もいない人ごみの中

迷子の泣き虫が

うずくまって

鳴いている
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