香りの住処/
 

ブラックコーヒーもタブレットも
静かな苦み、それこそ初めての煙草の味を
忠実に私に思い起こさせるのに

桜の約束も果たせなかった今年や
蟻の蠢く夏の照りつける道路や
そういう風景は いつだって進み続けて
昨日や昔に忠実じゃあないの

ほおら もう 忘れたでしょう

約束も 泣き声も 大事にしていた人の顔も 全て
それでいいよ いいよ そうじゃなきゃあるけないよ

でも

通り過ぎて見えなくなった大切にしていたものたちを
未来より愛して 選ぶ というのなら
逆走することも もはや逃げとは呼べないよ

ただ ブラックコーヒーとタブレットが
いつかのいつかへ 待ちぼうけをくらってしまうだけ さ


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