北極海上を飛ぶ/天野茂典
 
 




  高度10,000メートルの上空から
  私は見ていた
  窓際の席で
  北極海を
  アンカレッジから飛び出して
  ベルギーまで北極海を眼下にながめつづけた
  乗客はアイ・マスクをしてほとんど寝ていた
  私だけ一人目覚めて
  何もない銀幕を眺め続けていたのだった
  オーロラも白熊も鯨さえ見ることはできなかった
  ただ白い闇が広がっているだけだった
  私は思った
  この極点を目指して何百人の冒険家たちが
  過酷な条件を背負って
  極点をめざしたことだろうかと
  犬橇で 徒歩で バイクで
  植村直己もそのひとりだった
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