追想/霜天
 
いつも躓く丘の上の
崖の縁に私を積み上げていく
こんな季節でも不思議と崩れないもので
いつしか、
見上げるほどの、わたしになっている


いつからこんなことを、と
通りすがる誰かに聞いても
昔がないから、と
逃げるようにする
ひとりふたり、と繰り返したところで
皆、私なんだと気付く


道端の石ころに足を取られ
水溜りに注がれた世界を
飛び越えるように、揺らす
限りある足跡を
踏み潰すように使いながら
使い古しのわたしが
あと、どれくらいここにいられるか、と
指折り




がらがらと、崩れる音がして
わたし、が飛び起きると
私、整然とした塔になっていて
遠い街からでも見つけられる、きっと、だろうと
一通り残さず、笑い尽くして
通り過ぎる


通りすがる
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