箱庭の詩 /服部 剛
私の詩は、一つの庭。
暖かい陽のふりそそぐ庭に根を張る
草と木と花
土の下に張り巡らされた
地底の家へ
今日の食物を運ぶ一匹の蟻の、愛しさよ。
今・私の詩を読んでいるあなたは
暖かい陽のまなざしを一点に
そそがれながら生きる、一匹の蟻。
春の朝に花々が顔を開き
夏の夕暮れの山々に蜩の合唱は響き
秋風に、枯葉はたゆたい
冬風にぽとん、と柿は落ちる
それぞれがそれぞれらしく
自らの花を咲かせる
この詩情の庭で
今日の食物を無心に運んでいる
一匹の蟻になったあなたは
いつかきっと、辿り着くでしょう
地下の深くへ下りてゆく
蟻の王国の細道で
遠くからこちらへ呼びかけている
あの、光の洞窟へ
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