午後の雨脚/たま
この街に雨なんていらなかったはずなのに
梅雨が来たからってだれひとり喜ぶ術もなかったのに
転ぶようにして降りる戸越公園駅のみじかいホームは
いつも苦手だった
ドアカットがなかったころの四両編成の車両を思い出
しては苦笑いする
歳かもしれないな・・ なんて
いつもは殺風景なマンションの自転車置き場に
雨にぬれて小鳥のようにかがやく紫陽花をみつけた
雨傘で身をかくして
一輪手折った
雨にぬれて紫陽花の花は重い
ぬれたままの一輪をHの雑多な部屋に活けた
雨の日の紫陽花ってきれいだね
ふぅーん、好きなの?
意外そうな顔をしてHが聞き返
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