労働ノ涙 /服部 剛
 
10日前に言いあった 
苦手な上司と声をかけあい 
皆で円滑に 
お年寄の入浴介助が出来た日 

各々は言葉のボールを 
互いに投げあい 
各々はそれぞれに必要な 
お年寄に手を差しのべ  

狭い風呂場で、動き回るスタッフと 
手を引かれてゆっくり歩む 
裸のお年寄との間に光る 
労働の神秘が、瞬いた 

入浴介助を終えた、昼休み前 
汗水にびっしょり濡れたTシャツを 
更衣室の外の日向に干せば 

ハンガーの下、焼ける地面に 
歓びの涙のような一滴が、光って落ちた 






  
戻る   Point(3)