午後の果実/たま
 
あとかたもなく崩れゆく遠い果実を見つめている

Hのしろい指がりんごの皮をむく
どこまでも切れることなくつづく紅い航跡はこの星を
ひと回りしてわたしのからだのやわらかい節々にから
みつく

 皮ごと食べてもよかったのに
 うそぉ・・。あたしの芯ばかりほしがるくせに

そうだった
からみあう綿菓子と地軸の憂鬱は幼いころの夢のなか
にあっていまも絶えることなくやってくる

 ねぇ、りんごの芯とあたしのとどっちがおいしい?
 種がなかったらりんごかなぁ

ふりかえれば記憶なんてすべてあとかたもなく
埋めあわせのように残されたペニスの痛覚も朝には消
えるから歪んだまま
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